「たんの吸引が必要な方から入居の相談を受けたが、今の体制では受け入れられない」「訪問看護と連携したグループホームをつくりたいが、何から考えればよいか分からない」――長崎県内の障がい福祉の事業者の方から、こうしたご相談が増えています。

この記事では、医療的ケアが必要な方を受け入れるグループホームの制度、看護体制、建物の設計、開設までの流れを整理します。

この記事の要点

  • 医療対応型グループホームとは、看護職員の配置や、医療機関・訪問看護との連携によって、医療的ケアが必要な方も暮らせる体制を整えた障がい者グループホーム(共同生活援助)の通称で、制度上の独立した類型ではありません。
  • 看護の体制づくりには、事業所に看護職員を配置する方法と、医療機関等と連携して看護職員に訪問してもらう方法(医療連携体制加算)があり、2026年11月時点の厚生労働省の通知に要件が定められています。
  • 介護職員がたんの吸引や経管栄養を行うには、職員の研修修了・認定と、事業所の都道府県への登録の両方が必要です(社会福祉士及び介護福祉士法)。
  • 建物は、看護職員の作業スペース、医療機器の電源と停電への備え、救急搬送の動線、介助しやすい浴室・トイレを最初の設計に入れることが大切です。
  • 長崎県で開設する場合、指定の申請は指定希望日の3か月前の末日までが期限で、その前に県(長崎市・佐世保市は各市)との事前協議が必要です。

医療対応型グループホームとは?

医療対応型グループホームとは、たんの吸引・経管栄養・服薬管理・日々の健康管理などの医療的ケアが必要な方も暮らし続けられるよう、看護職員の配置や医療機関・訪問看護との連携体制を整えた障がい者グループホームのことです。障害者総合支援法上のサービス名は「共同生活援助」で、「医療対応型」という名前の類型が法律で定められているわけではありません。

障がい者グループホームの類型は、介護サービス包括型・日中サービス支援型・外部サービス利用型の3つです。医療対応型グループホームは、このいずれかの類型で指定を受けたうえで、看護の体制を上乗せして整えたものと考えると分かりやすくなります。昼も住まいで過ごす方が多い場合は、日中サービス支援型との組み合わせも選択肢になります(日中サービス支援型グループホームの開設で詳しくご紹介しています)。

なぜ医療的ケアに対応したグループホームが求められているの?

医療的ケアに対応したグループホームが求められている理由は、障がいのある方の重度化・高齢化と、医療的ケアが必要なお子さんが成人期を迎えていることです。厚生労働省の「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」でも、「医療的ケア児の成人期への移行にも対応した医療的ケアの体制の充実」が改定の柱の一つとして掲げられています。

看護職員はどう確保する?2つの方法

医療対応型グループホームの看護体制は、「事業所に看護職員を配置する方法」と「医療機関等と連携して看護職員に訪問してもらう方法」の2つに大きく分かれます。どちらも厚生労働省の通知「障害福祉サービス等の費用の算定に関する実施上の留意事項について(新旧対照表)」に要件が定められています。

項目 看護職員を配置する 医療機関等と連携する
関係する加算 看護職員配置加算 医療連携体制加算
体制の考え方 基準の人員に加えて、専従の看護職員を常勤換算で1人以上配置(複数の住居がある場合は利用者20人に1人以上) 医療機関等との連携により看護職員が事業所を訪問し、看護の提供や、喀痰吸引等を行う職員への指導を行う
主な役割 日常の健康管理、看護の提供、喀痰吸引等の指導、医療機関との連絡調整、常時の連絡体制 主治医の指示にもとづく看護の提供、喀痰吸引等の指導

看護職員配置加算を算定する事業所は、一部の区分を除いて医療連携体制加算を算定できないなど、加算どうしの関係にも決まりがあります。要件は改定で変わるため、計画段階で指定権者(県や市)に確認しましょう。

医療連携体制加算とは?訪問看護との連携の形

医療連携体制加算とは、医療機関等との連携により看護職員がグループホームを訪問し、入居者への看護の提供や、喀痰吸引等を行う職員への指導を行った場合などに算定できる加算です。厚生労働省の通知では、事業所があらかじめ連携する医療機関等と契約を結び、主治医の指示を受けて看護を提供することなどが定められています。

同じ医療連携体制加算のなかには、グループホームに看護師を置き、日常的な健康管理や、状態が悪くなったときの主治医との連絡・調整を行う体制を評価する区分もあります。この区分では准看護師は対象にならず、看護師1人あたりの対象者は20人までとされ、「重度化した場合における対応に係る指針」を定めて入居時に説明し同意を得ることが求められています。

訪問看護ステーションなどと連携する場合は、訪問の頻度や夜間・緊急時の連絡方法を契約前に話し合っておきましょう。連携先として認められる範囲は、指定権者へ確認してください。

喀痰吸引や経管栄養は介護職員でもできる?

介護職員がたんの吸引や経管栄養を行うことは、研修を修了して都道府県知事の認定を受けた職員が、都道府県に登録した事業所で行う場合に認められています。この仕組みは社会福祉士及び介護福祉士法に定められており、職員は「認定特定行為業務従事者」、事業所は「登録特定行為事業者」と呼ばれます(社会福祉士及び介護福祉士法(e-Gov法令検索)、第48条の3・附則第10条など)。

夜間に喀痰吸引が必要な方を受け入れるには、研修を修了した介護職員を夜勤のシフトに組み込めるかが大きなポイントです。研修の期間も見込んで、採用と育成を開設スケジュールに入れておきましょう。

医療対応型グループホームの建物で気をつけることは?

医療対応型グループホームの建物は、一般的なグループホームの基準(居室は原則個室で、収納などを除き7.43㎡以上など)を満たしたうえで、看護と介助のしやすさを最初から設計に入れることが大切です。

1. 看護職員の作業スペースと物品の保管場所

看護記録の作成、薬や衛生材料の保管、手洗いができる場所を職員スペースの近くにまとめ、施錠できる収納も用意しておくと、訪問した看護職員も作業しやすくなります。

2. 医療機器の電源と停電への備え

吸引器や酸素濃縮器などを使う方の居室では、ベッドまわりのコンセントの数と位置を計画し、停電時の備え(蓄電池や発電機など)も設計段階で検討します。

3. 救急搬送と車いすの動線

体調の急変に備え、居室から玄関まで車いすやストレッチャーで移動できる段差のない廊下と、救急車を止めやすい玄関まわりを確保します。

4. 介助しやすい浴室・トイレ

重度の方の入浴には、介助者が2人で入れる広さの浴室やリフトなどの検討が必要になることがあります。トイレも車いすと介助者が入れる広さにしておきます。

5. 消防設備と感染対策

入居者の状態や建物の規模によって、スプリンクラーなどの必要な消防設備が変わります。設計の初期に消防署へ相談し、感染対策の設備とあわせて建築費に織り込みます。

建築費と開設までの流れは?

医療対応型グループホームの建築費は、介護サービス包括型10室で5,000万円台〜、日中サービス支援型20室で1億円台〜がひとつの目安です。浴室設備や非常用電源などの仕様、規模、土地の条件によって大きく変わるため、早めに概算を出して事業計画に反映させることが大切です。

長崎県の「指定障害福祉サービス事業所等の指定(申請・届出様式)」に掲載されている指定申請の手引き(令和8年3月改訂版)では、県への事前協議(要予約)を経て、指定希望日の3か月前の末日までに申請書を提出することとされています。中核市の長崎市・佐世保市に事業所を置く場合は、各市の指定を受けます。開設までの一般的な流れは次のとおりです。

  1. 受け入れる方の状態(医療的ケアの内容・人数)と類型を決める
  2. 看護体制(配置か連携か)と連携先の候補を決める
  3. 土地探し・建物の基本計画を立てる
  4. 事業計画書を作成し、金融機関に融資を相談する
  5. 設計、消防署・建築の窓口との事前協議
  6. 県または市との事前協議
  7. 着工・竣工、職員の採用と喀痰吸引等の研修、事業者の登録
  8. 指定申請・入居者の受け入れ

グループホーム開設の全体の流れは、障がい者グループホーム開設の流れと建築費用でもご紹介しています。

医療対応型グループホームを開設する前のチェックリスト

  • 受け入れる方の医療的ケアの内容と人数を想定したか
  • 看護職員を配置するか、医療機関等と連携するかを決めたか
  • 連携先と訪問の頻度や夜間の連絡方法を話し合ったか
  • 喀痰吸引等を行う職員の研修と、事業所の登録の時期を計画したか
  • 「重度化した場合における対応に係る指針」の内容を検討したか
  • 医療機器の電源、停電への備え、救急搬送の動線を設計に入れたか
  • 消防署・建築の窓口、県または市の障害福祉担当へ事前相談したか
  • 人件費を含めた事業計画書を作り、金融機関に相談したか

よくあるご質問

Q1. 医療対応型グループホームには看護師の常駐が必要ですか?

A. いいえ、常駐は必須ではありません。医療機関等と連携して看護職員に訪問してもらう方法もあります。ただし、受け入れる方の状態によっては看護職員の配置が必要になるため、受け入れ方針と合わせて検討してください。

Q2. 夜間にたんの吸引が必要な方もグループホームに入居できますか?

A. はい、体制が整えば入居できます。夜間に看護職員がいない場合は、研修を修了して認定を受けた介護職員が、登録した事業所で吸引を行う体制が必要です。

Q3. 今あるグループホームを医療対応型に変えられますか?

A. はい、看護体制を整えれば対応できる場合があります。ただし、浴室・トイレの広さや電源が足りず改修が必要になることもあります。

まとめ

医療対応型グループホームの開設のポイントは、受け入れる方の状態を先に決めること、看護体制(配置か連携か)と喀痰吸引等の体制を整えること、そして看護と介助のしやすさを最初から建物の設計に入れることです。

コムWELLでは、長崎市・大村市周辺を中心に、建物の設計・施工だけでなく、開設・運営面まで含めたトータルサポートを行っています。土地探しや建て貸しオーナーのご紹介、事業計画書の作成や銀行融資のサポートについては、コムWELLのコンセプトをご覧ください。

この記事について

執筆:コムWELL(長崎県で介護施設・障がい者福祉施設の計画から建築・開設までをサポート)/最終更新:2026年11月3日

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