「グループホームを増やしたいが、土地を買って建てるほどの資金はない」「建て貸しという方法があると聞いたが、どんな仕組みで、何に気をつければよいのか分からない」――長崎県内の福祉事業者の方から、こうしたご相談をいただくことが増えています。
建て貸しは、初期費用を抑えながら新築のグループホームを開設できる方法です。一方で、家賃や契約期間など、長く続く取り決めを最初に結ぶ方法でもあります。この記事では、建て貸しの仕組み、メリットと注意点、契約で決めておきたいこと、開設までの流れを整理します。
この記事の要点
- グループホームの建て貸しとは、地主様が自分の土地にグループホーム用の建物を建て、運営事業者がその建物を長期で借りて運営する方法です。
- 運営事業者は土地の購入費と建築費を負担せずに新築で開設でき、毎月の家賃を払う形になります。
- 地主様にとっては、空いている土地を長期の賃貸事業に使えることや、相続税の評価が下がる場合があることがメリットです(税務は税理士への確認が必要です)。
- 家賃は運営の収支から無理のない額を逆算し、契約期間・賃料改定・修繕の負担・中途解約の条件を最初に書面で決めておくことが大切です。
- 長崎県では、土地探し・地主様のご紹介・事業計画書づくりまで相談できる建築会社に早めに相談すると進めやすくなります。
グループホームの建て貸しとは?
グループホームの建て貸しとは、土地を持つ地主様がグループホーム用の建物を建て、障がい福祉や介護の運営事業者がその建物を一括で借りて運営する開設方法です。「借り上げ」「一括借り上げ」と呼ばれることもあります。
建て貸しの建物は最初から運営事業者の使い方に合わせて計画されるため、既存の住宅を借りるより、間取りや設備を運営に合わせやすいのが特徴です。
グループホームを開設する方法は、大きく分けると次の3つです。
| 開設の方法 | 初期費用 | 毎月の負担 | 建物の自由度 |
|---|---|---|---|
| 自社で土地を買って建てる | 大きい(土地代+建築費) | 借入金の返済 | 高い |
| 建て貸し(地主様が建てて借りる) | 小さい(備品・開設準備など) | 家賃 | 高い(計画段階で要望を反映) |
| 既存の住宅などを借りる | 改修費しだい | 家賃 | 低い(建物に合わせる) |
自社で建てる場合の建築費の目安や開設の全体の流れは、障がい者グループホーム開設の流れと建築費用でご紹介しています。
運営事業者にとって建て貸しのメリットは?
運営事業者にとって建て貸しの最大のメリットは、土地の購入費と建築費を自社で負担せずに、新築のグループホームを開設できることです。包括型10室で5,000万円台〜、日中サービス支援型20室で1億円台〜がひとつの目安になる建築費(規模・仕様・土地条件で変わります)を借入れずに済むため、手元の資金を職員の採用や開設準備に回せます。
- 複数の拠点を展開しやすい:1棟ごとの初期費用が小さいため、地域に合わせて拠点を増やす計画が立てやすくなります。
- 運営に合った建物にできる:居室の数や広さ、職員の動線、浴室やトイレの介助のしやすさなどを、設計の段階から要望として伝えられます。
- 新築ならではの安心感:入居を検討するご本人やご家族、採用面接に来る職員の方にとって、新しく清潔な建物は大きな安心材料になります。
規模の大きな類型の建物のポイントは、日中サービス支援型グループホームの開設をご覧ください。
地主様にとって建て貸しのメリットは?
地主様にとって建て貸しのメリットは、使っていない土地を、運営事業者が長期で一括して借りる賃貸事業に生かせることです。1部屋ずつ入居者を募集する必要がない点も特徴です。
相続税の面では、自分の土地に建物を建てて人に貸している場合、その敷地は「貸家建付地」として評価され、自用地(自分で使う土地)より評価額が下がります。国税庁のNo.4614 貸家建付地の評価では、「自用地としての価額-自用地としての価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合」で計算すると示されています。また、要件を満たす貸付事業用の宅地は、小規模宅地等の特例(国税庁 No.4124)により、200㎡までの部分の評価額が50%減額される場合があります(いずれも国税庁タックスアンサーの「令和8年4月1日現在法令等」による)。
ただし、税金の扱いは地主様ごとの状況で変わるため、具体的な効果は税理士への確認をおすすめします。
建て貸しで注意したいことは?
建て貸しで最も注意したいのは、長期の家賃負担を前提にした契約になることです。入居が進まなくても家賃は毎月かかります。
- 家賃が収支を圧迫しないか:入居率が下がった場合でも家賃を払い続けられるか、事業計画書で確かめておきます。
- 中途解約の扱い:契約期間の途中で運営をやめる場合に、違約金や残りの期間の家賃がどうなるかを確認します。
- 修繕の負担の分け方:屋根や外壁などの建物本体と、設備・内装のどちらを誰が直すかを決めておかないと、後でもめる原因になります。
家賃と契約条件はどう決める?
建て貸しの家賃は、地主様の建築費と期待する利回り、そして運営事業者の収支の両方から決めるのが基本です。運営事業者の立場では、定員・入居率の見込みと報酬・人件費から、建物に払える家賃の上限を先に計算しておくと、交渉がしやすくなります。
契約では、少なくとも次の項目を書面で取り決めておきます。
| 取り決める項目 | 確認したいこと |
|---|---|
| 契約の形と期間 | 普通借家か定期借家か、契約期間と更新の扱い |
| 家賃と改定 | 月額、支払いの開始時期、何年ごとにどう見直すか |
| 敷金・保証金 | 金額と返還の条件 |
| 修繕の負担 | 建物本体・設備・内装それぞれの負担者 |
| 中途解約と原状回復 | 解約の予告期間、違約金、退去時にどこまで元に戻すか |
| 建物の仕様 | 居室数、消防設備、介助設備など運営に必要な仕様と、その費用の負担 |
普通借家とは、期間が満了しても正当な理由がなければ更新される一般的な建物の賃貸借です。定期借家(定期建物賃貸借)とは、契約の更新がなく、期間の満了で終了する建物の賃貸借です。借地借家法(e-Gov法令検索)第38条では、定期借家にするには公正証書などの書面で契約し、地主様があらかじめ「更新がなく期間満了で終了する」ことを書面で説明する必要があり、説明がなければ更新しない旨の定めは無効になると定められています。入居者の方が住み続けられるかに関わるため、どちらの契約にするかを最初に確認しましょう。
建て貸しの土地はどう探す?
建て貸しの土地は、グループホームの立地の基準を満たし、入居者の方が地域で暮らしやすい場所であることが前提です。厚生労働省の基準(平成18年厚生労働省令第171号)第210条では、共同生活住居は住宅地、または住宅地と同程度に家族や地域住民との交流の機会が確保される地域にあり、入所施設や病院の敷地の外にあることが求められています。
同じ第210条では、新築の共同生活住居の入居定員は2人以上10人以下、居室は原則個室で、1室の面積は収納設備等を除いて7.43㎡以上と定められています。具体的な運用は自治体の条例や手引きで確認が必要です。
そのうえで、用途地域や市街化調整区域かどうか、道路の幅、災害の危険がある区域に入っていないか、通院や日中活動の場所への行きやすさなどを確認します。市街化調整区域でも条件によっては開設できる場合がありますが、自治体ごとの手続きが必要です。
建て貸しで開設するまでの流れは?
建て貸しでグループホームを開設する流れは、一般的に次のとおりです。
- 事業の方針決定(類型、定員、開設したい地域)
- 事業計画書の作成(入居の見込み、職員配置、払える家賃の上限)
- 土地と地主様の紹介・現地確認
- 自治体の障害福祉担当課への事前相談
- 建物のプランと建築費、家賃の条件のすり合わせ
- 賃貸借契約の締結(地主様と運営事業者)、地主様の融資手続き
- 設計・消防署や建築の窓口との事前協議、着工・竣工
- 職員の採用・研修、入居者募集、指定申請・指定
指定申請の窓口や締め切りは事業所の所在地によって異なるため、計画の早い段階で長崎県または開設予定の市町の障害福祉担当課に確認しておきましょう。建物の完成時期と指定申請の締め切りがかみ合うよう、逆算してスケジュールを組むことが大切です。
建て貸しで開設する前のチェックリスト
- 入居率が下がった場合も含めて、払える家賃の上限を試算したか
- 開設する地域の立地の基準や、用途地域・市街化調整区域を確認したか
- 運営に必要な居室数・設備・消防設備をプランに反映したか
- 契約の形と期間、家賃の改定、修繕の負担、中途解約の条件を書面で決めたか
- 地主様に税金の扱いを税理士へ確認するようお伝えしたか
- 自治体の窓口に事前相談し、指定申請の必要書類を確認したか
- 竣工から指定、入居開始までのスケジュールを逆算したか
よくあるご質問
Q1. グループホームを建て貸しで開設すると、初期費用はどれくらいかかりますか?
A. 土地代と建築費がかからない分、自社で建てるより大きく抑えられます。家具・家電などの備品、職員の採用や研修、開設前の人件費、敷金などが主な費用です。金額は規模や契約条件によって変わるため、事業計画書で個別に試算します。
Q2. 土地を持っていなくても、建て貸しでグループホームを開設できますか?
A. はい、できます。建て貸しは、土地を持つ地主様が建物を建て、運営事業者が借りる方法です。地主様のご紹介から相談できる建築会社に依頼すると、土地探しと建物の計画を同時に進められます。
Q3. 建て貸しの契約期間は何年くらいですか?
A. 決まった年数はなく、地主様の建築費の回収期間や融資の返済期間をふまえて、当事者同士で決めます。長期の契約になることが多いため、期間の途中で解約するときの条件まで含めて確認しておくことが大切です。
まとめ
グループホームの建て貸しは、運営事業者にとっては初期費用を抑えて新築で開設でき、地主様にとっては土地を長期の賃貸事業に生かせる方法です。成功のポイントは、運営の収支から無理のない家賃を決めること、契約条件を最初に書面ではっきりさせること、そして立地の基準を満たす土地と地主様を見つけることにあります。
コムWELLでは、長崎市・大村市周辺を中心に、地元の地主様・不動産会社・金融機関とのつながりを生かした土地探しや建て貸しオーナーのご紹介、事業計画書の作成や銀行融資のサポート、開設・運営面まで含めたトータルサポートを行っています。詳しくはコムWELLのコンセプトや土地情報をご覧ください。
この記事について
執筆:コムWELL(長崎県で介護施設・障がい者福祉施設の計画から建築・開設までをサポート)/最終更新:2026年11月2日
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