「グループホームを建てるとき、スプリンクラーは要るのか」「入居者の障害支援区分によって消防設備が変わると聞いたが、どう判断されるのか」――長崎県内でグループホームの開設を考えている福祉事業者様から、よくいただくご相談です。
グループホームの消防設備は、建物の広さだけでなく、どのような方が入居するかによって必要なものが変わります。設計が進んでから設備を追加すると、工事費や工期に大きく響きます。この記事では、グループホームの消防設備の基本、スプリンクラー設備・自動火災報知設備・火災通報装置の要否の考え方、長崎で開設する前に確かめたいことを、消防庁などの公的な資料をもとに整理します。
この記事の要点
- グループホームの消防設備は、消防法施行令の用途区分(6項ロ・6項ハ)によって必要なものが変わります。
- 障がい者グループホームは、障害支援区分4以上の方が定員の概ね8割を超えることを目安に、所轄の消防機関が6項ロに当たるかを判断します。
- 6項ロのグループホームは、自動火災報知設備と、自動火災報知設備に連動する火災通報装置が面積にかかわらず必要で、スプリンクラー設備も原則として必要です(一定の条件を満たす275㎡未満の建物を除く)。
- 長崎市は、市が指定する認知症高齢者グループホームなどにスプリンクラー設備の設置を条例で定めています(平成25年6月28日施行の市独自基準)。
- 設計の初期に、所轄の消防署と入居者像・建物の規模を前提に事前相談することが大切です。
グループホームの消防設備とは?
グループホームの消防設備とは、火災の発見・通報・初期消火・避難のために、消防法令にもとづいて建物に設ける設備のことです。代表的なものは、スプリンクラー設備、自動火災報知設備、消防機関へ通報する火災報知設備(火災通報装置)、消火器、誘導灯です。
自動火災報知設備とは、煙や熱を感知器で自動的に見つけ、ベルなどで建物内に火災を知らせる設備です。火災通報装置とは、ボタン操作や自動火災報知設備との連動で、119番に自動で通報する装置です。グループホームの入居者には、自分だけでは避難が難しい方もいるため、一般の住宅より厳しい基準が設けられています。
長崎県では、平成18年1月に大村市、平成25年2月に長崎市で認知症高齢者グループホームの火災が起き、その後、国の基準が強化されてきました(出典:消防庁「消防の動き」2013年3月号)。長崎市の火災を受けて、自力で避難することが難しい方が主に入所する社会福祉施設には、平成27年4月1日から、原則として面積にかかわらずスプリンクラー設備の設置が義務づけられました(出典:消防庁「平成27年版 消防白書」)。
6項ロと6項ハの違いは?
6項ロと6項ハは、消防法施行令の別表第一で決められている防火対象物(建物)の用途区分です。6項ロは「避難が困難な方を主として入居させる施設」、6項ハは「それ以外の福祉施設」で、6項ロのほうが消防設備の基準が厳しくなります。
障がい者グループホーム(共同生活援助)は、平成27年4月1日の改正で、避難が困難な障がい者等を主として入居させるもの(6項ロ)と、それ以外のもの(6項ハ)に分けられました。6項ロに当たるかどうかは、障害支援区分4以上の方が定員の概ね8割を超えることを目安として、所轄の消防機関が判断します(出典:大阪府福祉部「障がい者グループホームにおける防火安全対策の推進について」、平成29年9月)。
認知症高齢者グループホームは、6項ロに当たります。日中サービス支援型や医療的な支援が必要な方を受け入れるグループホームでは、障害支援区分の高い方が多くなりやすいため、6項ロを前提に計画を立てることが多くなります。医療的な支援を行うグループホームについては医療対応型グループホームとは?もご覧ください。
グループホームに必要な消防設備は?
グループホームに必要な消防設備は、6項ロか6項ハかで大きく変わります。大阪府福祉部の資料では、平成27年4月1日の改正後の主な基準が次のように整理されています(出典:大阪府福祉部 資料)。
| 設備 | 6項ロのグループホーム | 6項ハのグループホーム |
|---|---|---|
| スプリンクラー設備 | 原則としてすべての施設(一定の条件を満たす275㎡未満の建物を除く) | 延べ面積6,000㎡以上(平屋建てを除く) |
| 自動火災報知設備 | すべての施設 | すべての施設 |
| 火災通報装置 | すべての施設(自動火災報知設備と連動させる) | 延べ面積500㎡以上 |
| 消火器 | すべての施設 | 延べ面積150㎡以上 |
この表は基本的な整理です。建物に他の用途(事務所や住宅など)が入る場合や、階数・地階・窓のない階がある場合は、別の基準が加わることがあります。実際に必要な設備は、所轄の消防署で確認してください。
275㎡未満ならスプリンクラーは不要?
6項ロの障がい者グループホームでも、延べ面積が275㎡未満で、介助がなければ避難できない方が主な入居者でない場合は、スプリンクラー設備が不要になることがあります。「介助がなければ避難できない方」とは、消防法施行規則第12条の3で定められた方で、障害支援区分4以上のうち、移乗・移動・危険の認識・説明の理解などの認定調査項目で支援が必要とされる方を指します(出典:消防庁 消防予第82号、大阪府福祉部 資料)。
ただし、入居者が入れ替わって障害支援区分の高い方が増えると、後からスプリンクラー設備が必要になる場合があります。開設後の入居者像の変化も見込んで、設置するかどうかを決めるのが安心です。
また、比較的小規模な施設では、水道の配管につなぐ「特定施設水道連結型スプリンクラー設備」や、配管工事のいらない「パッケージ型自動消火設備」、配線のいらない無線式の「特定小規模施設用自動火災報知設備」を使える場合があります。どれが使えるかは建物の規模と用途で決まるため、設備の選び方も消防署と相談しましょう。
長崎市のグループホームに独自の基準はある?
長崎市には、認知症高齢者グループホームなどの消防設備について、市独自の基準があります。長崎市は平成25年6月28日施行の条例改正で、市が指定する介護予防認知症対応型共同生活介護の共同生活住居にスプリンクラー設備を設けること、介護予防小規模多機能型居宅介護の事業所にスプリンクラー設備・自動火災報知設備・火災通報装置を設けることを定めました。あわせて、避難訓練などを月1回行うことも定めています(出典:長崎市 条例の独自基準に関する資料)。
このように、消防法令の基準に加えて、介護保険・障害福祉の指定を行う自治体が独自の基準を設けていることがあります。長崎市のほか、大村市・諫早市・長与町など長崎県内の他の地域で計画する場合も、消防署と指定権者(福祉の担当課)の両方に基準を確認しておきましょう。
消防設備を決める流れは?
グループホームの消防設備は、「入居者像の整理 → 用途区分の見込み → 消防署との事前相談 → 設計・工事 → 設置届と検査」の流れで決めます。
- 入居者像を整理する:想定する障害支援区分や要介護度、定員を決めます。
- 用途区分を見込む:6項ロ・6項ハのどちらになりそうかを整理します。
- 消防署に事前相談する:図面(案)と入居者像を持って、必要な設備を確認します。
- 設計・工事を行う:防炎物品(カーテン・じゅうたんなど)の使用や、避難経路も合わせて計画します。
- 設置届と検査を受ける:工事後に消防署へ設置の届出を行い、検査を受けます。
収容人員(入居者と職員の合計)が10人以上になるグループホームでは、防火管理者の選任も必要です(出典:大阪府福祉部 資料)。消防設備の配置は、居室や廊下の間取りとも関係します。間取りの考え方はグループホームの間取りとは?で紹介しています。
開設前のチェックリスト
- 想定する入居者の障害支援区分・要介護度と定員を整理したか
- 6項ロ・6項ハのどちらになるかを見込み、消防署に事前相談したか
- 延べ面積と、他の用途(事務所・住宅など)が建物に入るかを確認したか
- スプリンクラー設備を設けるかどうかを、入居者像の変化も含めて決めたか
- 自動火災報知設備と火災通報装置の連動を計画に入れたか
- 市町(指定権者)の独自基準がないかを確認したか
- 防炎物品の使用、防火管理者の選任、避難訓練の計画を準備したか
よくあるご質問
Q. 障がい者グループホームにスプリンクラーは必要ですか?
A. いいえ、すべてのグループホームに必要なわけではありません。6項ロのグループホームは原則として必要ですが、延べ面積275㎡未満で一定の条件を満たす場合は不要になることがあります。6項ハのグループホームは、大規模な建物でなければ原則として不要です。
Q. グループホームが6項ロになるかは誰が決めますか?
A. 所轄の消防機関が判断します。障害支援区分4以上の方が定員の概ね8割を超えることが目安で、サービスの内容なども踏まえて判断されます。設計の前に消防署へ相談しましょう。
Q. 既存の住宅を使う小さなグループホームでも自動火災報知設備は必要ですか?
A. はい、6項ロ・6項ハのどちらでも、入居者が住むグループホームは原則として必要です。小規模な建物では、無線式の特定小規模施設用自動火災報知設備を使える場合があります。
まとめ
グループホームの消防設備は、入居者像から決まる用途区分(6項ロ・6項ハ)と、建物の延べ面積によって必要なものが変わります。特にスプリンクラー設備は工事費への影響が大きいため、設計の初期に入居者像を整理し、所轄の消防署と自治体の両方に基準を確認しておくことが、手戻りを防ぐ近道です。
コムWELLは、長崎市・大村市周辺で、建物の計画から開設・運営面まで含めたトータルサポートを行っています。入居者像に合わせた建物の計画づくりや、事業計画書の作成もお手伝いします。詳しくはコムWELLのサポート内容をご覧ください。
この記事について
執筆:コムWELL(長崎県で介護施設・障がい者福祉施設の計画から建築・開設までをサポート)/最終更新:2026年11月05日
長崎県でグループホームの開設をご検討中の方へ
「この入居者像だとスプリンクラーは必要か」「既存の建物を使えるか」「消防署との相談をどう進めればよいか」など、計画の初期段階からご相談いただけます。長崎市・大村市・諫早市・長与町など長崎県内で、グループホームの建築・開設をお考えの方は、お気軽にお問い合わせください。

