「2027年4月からグループホームにも総量規制がかかると聞いたが、計画中のホームは開設できるのか」「定員を増やすなら急いだほうがよいのか」――長崎県内の障がい福祉の事業者の方から、こうしたご相談をいただくようになりました。

この記事では、障がい者グループホーム(共同生活援助)の総量規制の仕組みと2027年4月からの変更点、長崎県で開設を進めるときの注意点を、公的な資料をもとに整理します。

この記事の要点

  • グループホームの総量規制とは、地域のグループホームの量が障害福祉計画で見込んだ必要量に達している場合などに、都道府県知事等が新しい事業所の指定をしないことができる仕組みです(障害者総合支援法第36条第5項)。
  • 令和8年3月31日公布の施行規則改正により、令和9年(2027年)4月1日から共同生活援助が総量規制の対象に加わります。
  • 総量規制は指定権者の裁量で、国は強度行動障害や医療的ケアが必要な方などの個別ニーズを例外として扱う運用を周知するとしています。
  • 新規の指定だけでなく、定員を増やすための指定の変更も判断の対象になります(同法第37条)。
  • 長崎県で開設する場合は、計画段階から設置予定の市町と指定権者(県、または長崎市・佐世保市)へ相談することが大切です。

グループホームの総量規制とは?

グループホームの総量規制とは、都道府県等が障害福祉計画で定めた「サービスの必要な量の見込み」に、地域のサービス量がすでに達している場合や、新しい事業所の指定で超えることになる場合などに、都道府県知事等が事業所の指定をしないことができる仕組みです。根拠は障害者総合支援法第36条第5項で、条文では「計画の達成に支障を生ずるおそれがあると認めるとき」に「指定をしないことができる」と定められています(障害者総合支援法(e-Gov法令検索))。

障害福祉計画とは、都道府県と市町村が3年ごとに作る、障がい福祉サービスの必要量と提供体制についての計画です。総量規制は、この計画の見込量と実際のサービス量を比べて判断されます。

2027年4月から何が変わる?

2027年(令和9年)4月1日から、障がい者グループホーム(共同生活援助)が総量規制の対象サービスに加わります。障害者総合支援法施行規則の一部を改正する命令(令和8年内閣府・厚生労働省令第2号、令和8年3月31日公布)により、総量規制の対象を定めた施行規則第34条の20に「共同生活援助」が追加されました(障害者総合支援法施行規則・令和9年4月1日施行版(e-Gov法令検索))。

時点 施行規則第34条の20で総量規制の対象とされる障害福祉サービス
2027年3月31日まで 生活介護、就労継続支援A型、就労継続支援B型
2027年4月1日から 生活介護、就労継続支援A型、就労継続支援B型、共同生活援助

2027年4月は、第8期障害福祉計画(令和9〜11年度)が始まる時期でもあります。厚生労働省の資料では、2026年度(令和8年度)に自治体がニーズ調査と計画の策定を行い、2027年度から計画を実施する流れが示されています(厚生労働省「令和9年度に向けた障害福祉計画及び障害児福祉計画に係る基本方針の見直し」社会保障審議会障害者部会 第150回資料)。

なぜグループホームが総量規制の対象になったの?

グループホームが総量規制の対象に加わった理由は、事業所数が急増し、地域によっては供給がニーズを上回っている可能性があることと、支援の質を確保する必要があることです。厚生労働省が社会保障審議会障害者部会(第153回、令和7年12月8日)に示した資料では、次の3つの理由が挙げられています(厚生労働省「地域差の是正・指定の在り方に係る対応について」)。

  1. 事業所数が急増し、地域によってはニーズに比べて供給が過剰になっている可能性があること
  2. 専門性が低いと思われる事業者でも、指定要件を満たせば指定せざるを得ず、支援の質の確保が必要なこと
  3. 指定権者へのアンケートで、総量規制の対象に加えたほうがよいサービスとして「共同生活援助」が最も多かったこと

同じ資料では、共同生活援助全体の事業所数の伸び率が、令和3年度から令和7年度第1四半期までの各期間で年6〜11%程度、日中サービス支援型では年24〜57%程度と示されています。

新規開設や定員増はどう影響を受ける?

2027年4月以降、障がい者グループホームの新規開設の指定申請は、地域のグループホームの量が障害福祉計画の見込量に達している場合などに、指定されない可能性があります。定員を増やすための指定の変更の申請にも、同じ判断が準用されます(障害者総合支援法第37条)。

ただし、総量規制は自動的に開設を止める仕組みではありません。条文は「指定をしないことができる」で、発動するかどうかは指定権者が計画と地域の実情をもとに決めます。厚生労働省の第150回資料でも、総量規制の対象サービスについて、実際に総量規制を実施している自治体は1割程度にとどまると示されています。

そのため、開設予定地の第8期計画の見込量と、指定権者の運用方針が計画を左右します。

強度行動障害や医療的ケアの方向けのホームは例外になる?

強度行動障害や医療的ケアが必要な方などを受け入れるグループホームは、指定権者の判断で総量規制の例外として扱われる可能性があります。厚生労働省は、共同生活援助を総量規制の対象に加えるにあたり、強度行動障害の状態にある方や医療的ケアが必要な方などの個別ニーズがある場合は総量規制の例外とするなどの運用方法を周知し、こうした方々の受け入れに支障がないようにするとしています(第153回資料)。

同じ資料では、重度障害者について自治体が個別に利用者数の見込みを設定するよう努めることを、国の基本指針に盛り込む方向も示されています。例外の条件や必要な書類は指定権者ごとに異なるため、重度の方の受け入れを考えている場合は早めに相談しましょう(医療対応型グループホームとは?もご覧ください)。

長崎県でグループホームを開設するときはどう進める?

長崎県で障がい者グループホームを開設するときは、計画段階から設置予定の市町と指定権者に相談し、地域のニーズと計画の見込量を確かめながら進めることが大切です。長崎県障害福祉課は「届出、申請等に係る留意事項について」で、新たに事業所を設置する場合は、計画段階から設置予定市町の障害福祉担当課へ連絡・相談するよう求めています。

指定権者は、長崎市・佐世保市に事業所を置く場合は各市、それ以外の市町(大村市・諫早市・長与町など)は長崎県です。長崎県の「指定障害福祉サービス事業所等の指定(申請・届出様式)」に掲載されている指定申請の手引き(令和8年3月改訂版)では、県への事前協議(要予約)を経て、指定希望日の3か月前の末日までに申請することとされています。

2026年11月時点で、長崎県のホームページでは令和9年度以降のグループホームの総量規制の運用方針は確認できませんでした。土地の契約や着工の前に、最新の方針を指定権者に確認してください。

総量規制の時代に選ばれるグループホームの建物とは?

総量規制の時代に選ばれる障がい者グループホームの建物とは、地域で足りていないニーズに合わせ、受け入れる方の状態から逆算して設計された建物です。「誰のための住まいか」がはっきりした計画は、市町や指定権者との協議でも説明しやすくなります。

1. 重度の方の受け入れに対応できる間取りと設備

強度行動障害のある方には刺激を減らす居室の配置や壊れにくい内装、医療的ケアが必要な方には医療機器の電源や介助しやすい浴室・トイレが求められます。

2. 地域のニーズに合った立地

同じ市町のなかでも、グループホームが多い地区と少ない地区があります。市町の担当課や相談支援事業所の声を聞いて土地を探しましょう。

3. 規模と建築費のバランス

障がい者グループホームの建築費は、介護サービス包括型10室で5,000万円台〜、日中サービス支援型20室で1億円台〜がひとつの目安です(規模・仕様・土地条件で変わります)。後から定員を増やしにくくなる可能性も考えて規模を決めましょう。開設の全体の流れと費用は障がい者グループホーム開設の流れと建築費用でもご紹介しています。

総量規制に備えて開設前に確認したいチェックリスト

  • 開設予定地の指定権者(長崎県、長崎市、佐世保市)を確認したか
  • 設置予定市町の障害福祉担当課に、計画段階で開設の意向を伝えて相談したか
  • 市町と県の第8期障害福祉計画(令和9〜11年度)のグループホームの見込量を確認したか
  • 令和9年度以降の総量規制の運用方針(募集枠・例外・事前協議)を指定権者に確認したか
  • 受け入れる方の像を決め、それに合った間取り・設備を設計に入れたか
  • 指定希望日から逆算して、事前協議・申請・着工の日程を組んだか
  • 後から定員を増やせない場合も想定した事業計画書か

よくあるご質問

Q1. 2027年4月以降は、グループホームを新しく開設できなくなりますか?

A. いいえ、一律に開設できなくなるわけではありません。総量規制は、計画の見込量に達している場合などに指定権者が「指定をしないことができる」仕組みで、運用は自治体ごとに異なります。開設予定地の指定権者に方針を確認してください。

Q2. グループホームの定員を増やすときも総量規制の対象ですか?

A. はい、対象になり得ます。障害者総合支援法第37条により、定員を増やすための指定の変更にも総量規制の判断が準用されます。

Q3. 長崎県ではグループホームの総量規制はすでに始まっていますか?

A. いいえ、共同生活援助が対象になるのは2027年4月1日からです。具体的な運用方針は、県や長崎市・佐世保市に最新の情報をご確認ください。

まとめ

2027年4月から、障がい者グループホームは総量規制の対象になりますが、開設が一律に止まるわけではなく、指定権者が計画の見込量と地域の実情をもとに判断します。地域のニーズを確かめ、受け入れる方に合った建物と事業計画をつくり、早めに市町と指定権者へ相談することがいっそう大切になります。

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この記事について

執筆:コムWELL(長崎県で介護施設・障がい者福祉施設の計画から建築・開設までをサポート)/最終更新:2026年11月3日

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