「地主様から紹介された土地が市街化調整区域だった」「調整区域は家が建てられないと聞いたが、グループホームや介護施設も無理なのか」――長崎県内の福祉事業者の方から、こうしたご相談をよくいただきます。

市街化調整区域は建築が厳しく制限された区域ですが、福祉施設は許可を受けて建てられる場合があります。この記事では、許可の考え方、長崎県内の窓口、災害区域の注意点、開設までの流れを整理します。

この記事の要点

  • 市街化調整区域とは、都市計画法で「市街化を抑制すべき区域」と定められた区域で、建物の新築や用途の変更には原則として許可が必要です。
  • グループホームなどの障害福祉サービス事業や、デイサービス・認知症グループホームなどの老人福祉法の事業は社会福祉事業にあたり、都市計画法第34条第1号の「周辺に住む人のための公益上必要な建築物」として許可の対象になり得ます。
  • 許可されるかどうかは、許可権者(長崎市・佐世保市・諫早市は市長、長与町・時津町は長崎県)の審査基準で判断されます。
  • 土砂災害特別警戒区域などの災害レッドゾーンは、2022年4月から社会福祉施設の開発も原則として認められなくなりました。
  • 土地を決める前に、開発許可の窓口と福祉の担当課の両方へ事前相談することが、計画を止めないためのポイントです。

市街化調整区域とは?

市街化調整区域とは、都市計画法第7条で「市街化を抑制すべき区域」と定められた区域です。一方、市街化区域は、すでに市街地になっている区域や、おおむね10年以内に優先的に市街化を図る区域です。

市街化調整区域では、建物を建てるための土地の造成(開発行為)や、建物の新築・改築・用途の変更が、一部の例外を除いて許可制になっています。都市計画法第29条が開発行為の許可、第43条が開発行為をともなわない建物の新築や用途変更の許可を定めています(都市計画法(e-Gov法令検索))。

市街化調整区域に福祉施設は建てられる?

市街化調整区域でも、福祉施設は許可を受けて建てられる場合があります。都市計画法第34条は、市街化調整区域で開発許可ができる場合を各号で限定しており、その第1号に「主として周辺の地域に住む人が利用する、政令で定める公益上必要な建築物」が挙げられています。

この「公益上必要な建築物」は、都市計画法施行令第29条の5と第21条第26号で、学校、社会福祉法による社会福祉事業の用に供する施設、病院・診療所などと定められています(都市計画法施行令(e-Gov法令検索))。

社会福祉事業とは、社会福祉法第2条に列挙された福祉の事業のことです。同条第3項では、障害者総合支援法の障害福祉サービス事業(グループホーム、生活介護、就労継続支援など)や、老人福祉法の老人デイサービス事業、小規模多機能型居宅介護事業、認知症対応型老人共同生活援助事業(認知症グループホーム)などが第二種社会福祉事業とされています(社会福祉法(e-Gov法令検索))。

一方、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は、社会福祉法第2条の社会福祉事業の一覧には含まれていません。そのため、市街化調整区域での扱いが障がい福祉の施設などとは異なる場合があり、計画の前に許可権者へ個別に確認が必要です。

「許可の対象になる」と「許可される」は何が違う?

福祉施設が都市計画法第34条第1号の対象になり得ても、それだけで許可されるわけではありません。許可権者は、その施設が本当に「主として周辺に住む人のため」のものか、周辺の市街化をうながすおそれがないかなどを、それぞれの審査基準に沿って判断します。

審査基準では、周辺の集落の規模、利用者の範囲、敷地の広さ、接する道路の幅などが見られることが一般的です。具体的な条件は自治体によって異なるため、ここで一律の数字は示せません。第1号にあてはまらない場合でも、第34条第14号により、開発審査会の議を経て許可される道もあります。

また、市街化調整区域の許可は、許可を受けた目的(用途)にしばられます。長崎県の「市街化調整区域内での重要なお知らせ」でも、許可を受けた建物は許可された目的以外に使えず、使う人が変わっただけで違反になる場合があると注意を呼びかけています。

長崎県で市街化調整区域の許可を相談する窓口は?

長崎県で市街化調整区域の開発許可・建築許可を相談する窓口は、土地のある市町によって異なります。長崎県の案内(2026年3月12日更新)によると、長崎市・佐世保市・諫早市は知事に代わって市長が許可し、県の管轄で市街化調整区域が指定されているのは長与町と時津町です。

土地のある市町 開発許可・建築許可の相談先
長崎市 長崎市 建築部建築指導課 開発指導係
佐世保市 佐世保市 建築指導課 開発審査係
諫早市 諫早市 開発支援課
長与町・時津町 長崎県 長崎振興局 建築課

長崎市は市町村合併により、線引き(市街化区域と市街化調整区域の区分)のある区域、線引きのない区域、都市計画区域外が市内に混在しています。長崎市の「都市計画法の開発許可制度・様式および条例等」では、市街化調整区域では原則としてすべての開発行為が許可の対象とされ、開発許可が必要かどうかは事前に建築指導課へ相談するよう案内されています。

災害の危険がある区域ではどうなる?

土砂災害特別警戒区域などの災害レッドゾーンでは、2022年(令和4年)4月1日から、社会福祉施設の開発も原則として認められなくなりました。都市計画法の改正で、それまで対象外だった病院・社会福祉施設などの自己業務用の施設が規制に加わったためです。

長崎市の「安全なまちづくりのための開発許可制度を見直しました」では、災害レッドゾーンとして災害危険区域、地すべり防止区域、土砂災害特別警戒区域、急傾斜地崩壊危険区域が示されています。また、市の条例で建築規制をゆるめている区域(第34条第11号・第12号の条例区域)からは、土砂災害警戒区域や想定浸水深3m以上の浸水想定区域などの災害イエローゾーンも原則として除外されています。

斜面地の多い長崎県では、候補地がこれらの区域にかかっていないかを、ハザードマップで最初に確かめることが大切です。

市街化調整区域で福祉施設を開設するまでの流れは?

市街化調整区域で福祉施設を開設する流れは、一般的に次のとおりです。建築の前に許可の手続きが入る点が大きな違いです。

  1. 事業の方針決定(サービスの種類、定員、開設したい地域)
  2. 候補地の確認(区域区分、災害区域、道路、上下水道、周辺の集落の状況)
  3. 開発許可の窓口への事前相談(許可の対象になるか、必要な条件は何か)
  4. 障害福祉・介護保険の担当課への事前相談(整備の計画との関係、指定の見込み)
  5. 事業計画書の作成、土地の契約・融資の準備
  6. 開発許可または建築許可の申請・許可
  7. 設計、建築確認、消防との協議、着工・竣工
  8. 職員の採用、入居者・利用者の募集、事業所の指定申請・指定

土地の売買や賃貸借の契約は、許可の見込みが立ってから結ぶのが安全です。グループホーム開設の全体の流れと建築費の目安は、障がい者グループホーム開設の流れと建築費用でもご紹介しています。

市街化調整区域の土地を選ぶときの注意点は?

市街化調整区域の土地を選ぶときは、許可の見込みに加えて、運営のしやすさも確かめます。

  • 既存の建物の扱い:空き家などを福祉施設に使う場合も、用途の変更として許可が必要になることがあります。建てられた経緯は、開発許可・建築許可の通知書や検査済証などで確認します。
  • 道路と上下水道:接する道路の幅や、上下水道・排水の引き込みができるかで、造成や工事の費用が大きく変わります。
  • 通いやすさ:職員の通勤、通院や日中活動の場所への移動、送迎のルートを確かめておきます。
  • 融資:長崎県の案内でも、違反建築物は金融機関の融資が受けられないなどのトラブルにつながると注意されています。

建物を地主様に建ててもらい、運営事業者が借りる方法については、グループホームの建て貸しとは?で詳しく解説しています。

市街化調整区域で福祉施設を計画する前のチェックリスト

  • 候補地が市街化調整区域か、線引きのない区域か、都市計画区域外かを確かめたか
  • 計画しているサービスが社会福祉事業にあたるかを確かめたか
  • 災害レッドゾーン・イエローゾーンにかかっていないか、ハザードマップで確かめたか
  • 開発許可の窓口に、許可の対象になるか、必要な条件は何かを事前相談したか
  • 障害福祉・介護保険の担当課に、整備の計画や指定の見込みを相談したか
  • 道路の幅、上下水道・排水の引き込みを確かめたか
  • 土地の契約を、許可の見込みが立った後にするよう段取りしたか
  • 許可の期間を含めて、竣工・指定・開設までのスケジュールを逆算したか

よくあるご質問

Q1. 市街化調整区域にグループホームは建てられますか?

A. はい、許可を受けて建てられる場合があります。グループホームは社会福祉事業にあたり、都市計画法第34条第1号の許可の対象になり得ます。ただし、許可されるかは自治体の審査基準で判断されるため、土地を決める前に窓口へ相談してください。

Q2. 市街化調整区域の空き家をそのまま福祉施設に使えますか?

A. いいえ、手続きなしでは使えない場合があります。住宅を福祉施設に変えることは用途の変更にあたり、都市計画法の建築許可が必要になる場合があります。建築基準法や消防法の基準も満たす必要があります。

Q3. 市街化調整区域の許可にはどれくらいの期間がかかりますか?

A. 期間は自治体や計画の内容によって異なります。関係する課との協議や開発審査会の日程が入ることもあるため、余裕をもったスケジュールを組みましょう。

まとめ

市街化調整区域は建築が厳しく制限された区域ですが、グループホームやデイサービスなどの社会福祉事業の施設は、都市計画法第34条第1号などにより許可を受けて建てられる場合があります。ポイントは、許可されるかどうかは自治体の審査基準しだいであること、災害の危険がある区域は避けること、そして土地の契約の前に開発許可の窓口と福祉の担当課の両方へ相談することです。

コムWELLでは、長崎市・大村市周辺を中心に、市街化調整区域での開設ノウハウを生かした計画づくりを行っています。地元の地主様・不動産会社・金融機関とのつながりを生かした土地探し、事業計画書の作成、開設・運営面まで含めたトータルサポートについては、コムWELLのコンセプトや土地情報をご覧ください。

この記事について

執筆:コムWELL(長崎県で介護施設・障がい者福祉施設の計画から建築・開設までをサポート)/最終更新:2026年11月2日

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