「就労継続支援B型を始めたいが、どんな物件なら指定を受けられるのか」「物件を先に契約してしまってよいのか」――長崎県内で就労継続支援B型の開業を考えている福祉事業者様から、よくいただくご相談です。

就労継続支援B型の事業所は、設備の基準だけでなく、建築基準法の用途変更や消防の基準も満たす必要があります。この記事では、就労継続支援B型の開業で物件を選ぶときの基準と、長崎県で指定を受けるまでの流れを、厚生労働省・長崎県などの公的な資料をもとに整理します。

この記事の要点

  • 就労継続支援B型の事業所には、訓練・作業室、相談室、洗面所、便所、多目的室などの設備が必要です(相談室と多目的室は、支援に支障がなければ兼用できます)。
  • 就労継続支援B型の事業所は、原則として20人以上が利用できる規模が必要です(離島などで都道府県知事が認めた場合は10人以上)。
  • 就労継続支援B型の事業所は建築基準法の「特殊建築物」に当たり、既存の建物を使う部分が200㎡を超える場合は用途変更の確認申請が必要です。
  • 長崎県の手引き(令和8年3月改訂版)では、新規指定の事前相談は申請書受付の1か月前まで、物件の賃貸借契約や工事着工を行う場合はそれより前に行うよう求めています。
  • 長崎市・佐世保市に事業所を置く場合は、県ではなく各市の指定を受けます。

就労継続支援B型とは?

就労継続支援B型とは、一般の企業などで雇用契約を結んで働くことが難しい障がいのある方に、就労や生産活動の機会を提供し、働くために必要な知識・能力を高める訓練などを行う障害福祉サービスです。利用者は雇用契約を結ばずに作業を行い、事業所は生産活動の収入から必要な経費を引いた額を「工賃」として支払います。

工賃の1か月あたりの平均額は、3,000円を下回ってはならないと定められています(出典:障害福祉サービス事業の設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第174号)第87条)。そのため、就労継続支援B型の開業では、物件と同時に「その場所でどんな生産活動を行い、どれだけの収入を見込めるか」を考えることが大切です。

就労継続支援B型の開業に必要な条件は?

就労継続支援B型の開業には、法人であること、人員基準を満たす職員、設備基準を満たす物件、そして指定権者(県または市)の指定が必要です。主な人員基準は次のとおりです(出典:指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第186条を準用)。

職種 主な基準
管理者 1人(支障がなければ他の職務と兼務できる場合があります)
サービス管理責任者 利用者60人以下で1人以上(1人以上は常勤)
職業指導員・生活支援員 合計で、常勤換算で利用者の数を10で割った数以上。それぞれ1人以上(どちらか1人以上は常勤)

サービス管理責任者とは、利用者ごとの個別支援計画をつくり、支援の質を管理する職員です。

就労継続支援B型の事業所に必要な設備は?

就労継続支援B型の事業所には、訓練・作業室、相談室、洗面所、便所、多目的室その他運営に必要な設備を設けることが定められています(出典:厚生労働省令第171号第188条を第200条で準用)。

  • 訓練・作業室:訓練や作業に支障がない広さがあり、必要な機械器具などを備えること
  • 相談室:室内の話し声がもれないよう、間仕切りなどを設けること
  • 洗面所・便所:利用者の特性に応じたものであること

相談室と多目的室などは、利用者への支援に支障がなければ兼用できます。設備は原則としてその事業所の専用とする必要があります。訓練・作業室の具体的な面積の目安は、指定権者によって考え方が異なることがあるため、図面の段階で県または市に確認してください。

就労継続支援B型の定員は何人から?

就労継続支援B型の事業所は、原則として20人以上の人が利用できる規模が必要です。ただし、離島など国が定める地域で、将来も利用者の確保が見込めないと都道府県知事が認めた場合は、10人以上とすることができます(出典:厚生労働省令第174号第37条を第88条で準用)。

長崎県は五島・壱岐・対馬など離島の多い県です。離島で開業を考える場合は、対象地域に当たるかどうかを早めに指定権者へ確認しましょう。また、生活介護や就労移行支援などと一体で運営する「多機能型」には定員の特例があります。20人が過ごせる作業スペースや便所の数、送迎車の駐車場まで含めて、物件の広さを考えることが大切です。

物件を選ぶときに確かめたいことは?

就労継続支援B型の物件選びで最初に確かめたいのは、建築基準法の用途変更です。就労継続支援を行う施設は建築基準法の「児童福祉施設等」に当たり、特殊建築物になります(出典:大阪市「既存建築物を福祉関係施設に用途変更する場合の確認申請について」、令和元年6月)。

用途変更とは、事務所や店舗、住宅などとして建てられた建物を、別の用途で使うことです。建築基準法の改正(平成30年法律第67号)の施行により、確認申請が必要な特殊建築物への用途変更は、その用途に使う床面積が100㎡超から200㎡超に改められました(出典:国土交通省 国住指第661号、令和元年6月24日)。200㎡以下で確認申請が不要な場合でも、建物を法令に合う状態にする必要がある点に注意が必要です。

物件の種類 良いところ 確かめたいこと
空き店舗・事務所を借りる 初期費用を抑えやすく、開業までが早い 用途変更の要否、オーナーの承諾、便所・洗面所の改修、作業に合う床や電気容量
既存住宅を改修する 住宅地で落ち着いた環境をつくりやすい 20人が過ごせる広さ、階段や廊下、防火の基準、近隣への説明
新築する 生産活動に合わせた間取りと動線をつくれる 用途地域などの立地条件、建築費と資金計画、工期

市街化調整区域では、建物の用途や開発許可の条件で建てられるものが限られます。詳しくは市街化調整区域に福祉施設は建てられる?をご覧ください。また、就労継続支援の施設は消防法上の用途区分で「6項ハ」に当たることが多く、延べ面積などで必要な設備が変わるため、所轄の消防署に事前相談しましょう。

長崎県で指定を受けるまでの流れは?

長崎県で就労継続支援B型の指定を受けるには、「市町への相談 → 県(または市)との事前相談 → 物件の契約・工事 → 指定申請 → 指定」の順に進めます。長崎県の「指定申請の手引き(令和8年3月改訂版)」では、次のように定められています。

  1. 市町に開設の意向を伝える:建物の建設や賃貸借契約の前に、事業所を置く市町の障害福祉担当課へ連絡します。
  2. 事前相談をする(予約制):新規指定は申請書受付の1か月前まで、賃貸借契約や工事着工を行う場合はそれより前に相談します。コンサルタントや行政書士など事業者以外の方からの事前協議には対応しないとされています。
  3. 物件の改修・工事を終える:改修工事と、建築基準法などの手続き・検査、必要な備品の設置が完了していることが申請の前提です。
  4. 指定申請をする:指定希望日の3か月前の末日までに提出します(例:4月1日指定なら1月31日まで)。
  5. 指定を受ける:あわせて「開始届」の提出も必要です。

長崎市・佐世保市に事業所を置く場合は、各市の指定を受けます(長崎市の様式は長崎市「事業所指定申請書・変更届(障害福祉)」)。また、厚生労働省は令和7年11月28日に「指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドライン」を出しました。このガイドラインでは、事業計画書と収支予算書で生産活動の内容・収入の見込み・取引先を確認すること、指定前に用途変更・改修工事・消防設備の完了を確かめることなどが示されています。

生産活動と物件はどう結びつく?

就労継続支援B型の物件は、行う生産活動に合わせて選ぶことが大切です。軽作業なら作業台を並べる広さや材料・製品の置き場が、食品の加工や販売なら厨房設備や別の許可が必要になることがあります。生産活動の収支と、家賃や改修費を合わせた事業計画は、金融機関の融資を受けるときにも大切です。資金の準備はグループホームの融資とは?でも紹介しています。

開設前のチェックリスト

  • 行う生産活動と、その収入の見込み・取引先を整理したか
  • 定員(原則20人以上)が過ごせる訓練・作業室の広さがあるか
  • 相談室(間仕切りあり)、洗面所、便所、多目的室を確保できるか
  • 用途変更の確認申請が必要か(200㎡超か)を建築士に確認したか
  • 用途地域・市街化調整区域など立地の条件を確認したか
  • 所轄の消防署に必要な消防設備を相談したか
  • 賃貸借契約や工事の前に、市町と県(長崎市・佐世保市は各市)へ相談したか
  • 指定希望日から逆算して、申請(3か月前の末日)と工事完了の日程を組んだか
  • 近隣の住民へ開設前に説明する準備をしたか

よくあるご質問

Q. 就労継続支援B型は賃貸物件でも開業できますか?

A. はい、賃貸物件でも開業できます。ただし、設備基準を満たす改修や用途変更が必要になることが多いため、オーナーの承諾を得られるかを契約前に確かめましょう。

Q. 物件の契約は指定申請の前にしてもよいですか?

A. はい、物件は指定申請の前に確保する必要があります。ただし、長崎県の手引きでは、賃貸借契約や工事着工の前に県(または市)へ事前相談するよう求めています。契約の前に相談し、その物件で指定を受けられるかを確かめてください。

Q. 長崎市で就労継続支援B型を開業する場合の申請先はどこですか?

A. 長崎市です。長崎市と佐世保市は中核市のため、市内の事業所は各市の指定を受けます。それ以外の長崎県内の市町では、長崎県が指定を行います。

まとめ

就労継続支援B型の開業では、設備基準と定員を満たす広さ、建築基準法の用途変更、消防設備、そして生産活動に合った間取りを、物件を契約する前にまとめて確かめることが大切です。長崎県では賃貸借契約や工事の前に事前相談が求められているため、物件探しと行政への相談を並行して進めると、手戻りを防げます。

コムWELLは、長崎市・大村市周辺で、建物の計画から開設・運営面まで含めたトータルサポートを行っています。地元の地主様・不動産会社・金融機関とのつながりを生かした土地探しや、事業計画書の作成もお手伝いします。詳しくはコムWELLのサポート内容や土地情報をご覧ください。

この記事について

執筆:コムWELL(長崎県で介護施設・障がい者福祉施設の計画から建築・開設までをサポート)/最終更新:2026年11月06日

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