「高齢の方が安心して暮らせる住まいを、自社の土地や地域の土地でつくりたい」「介護事業と組み合わせて、サービス付き高齢者向け住宅を建てられないか」――長崎県内の介護事業者様や法人の経営者様から、このようなご相談をいただくことがあります。

サービス付き高齢者向け住宅は、一般の賃貸住宅とも介護施設とも違う、登録制度にもとづく住まいです。床面積や設備の基準を満たさないと登録できず、建てた後に間取りを変えるのは大きな負担になります。この記事では、サービス付き高齢者向け住宅の建築で最初に押さえたい登録基準、設計のポイント、事業計画の考え方を、公的な情報をもとに整理します。

この記事の要点

  • サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、高齢者住まい法にもとづいて登録される、安否確認(状況把握)と生活相談のサービスがついた高齢者向けの賃貸住宅です。
  • 建築では、各住戸の床面積が原則25㎡以上(共用の居間・食堂・台所などが十分なら18㎡以上)、台所・水洗便所・収納・洗面・浴室の設置、バリアフリーが登録の基準になります。
  • 国の「サービス付き高齢者向け住宅整備事業」では、令和8年度の新築の補助率は1/3(上限あり)で、住戸面積25㎡以上・10年以上の登録継続などが要件です(2026年11月時点)。
  • 長崎市内のサ高住は長崎市 建築部 住宅政策室が登録の窓口です。それ以外の地域は、所在地の自治体に確認が必要です。
  • 入居者の想定、併設する介護サービス、家賃と建築費のバランスを、設計の前に事業計画として固めることが大切です。

サービス付き高齢者向け住宅とは?

サービス付き高齢者向け住宅とは、高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)にもとづき登録される、バリアフリー構造で、状況把握と生活相談のサービスがついた高齢者向けの賃貸住宅です。平成23年の高齢者住まい法の改正で創設され、国土交通省と厚生労働省が共同で所管しています(出典:国土交通省「サービス付き高齢者向け住宅」)。

状況把握サービスとは、入居者の安否や心身の状況を定期的に確かめるサービスです。生活相談サービスとは、日常生活の困りごとの相談に応じるサービスです。サービス付き高齢者向け住宅は「住まい」であるため、介護が必要な入居者は、外部や併設の介護サービス事業所と個別に契約して介護を受けるのが基本です。

なお、食事の提供などを行うサービス付き高齢者向け住宅は有料老人ホームにも当たりますが、サ高住として登録を受けていれば、老人福祉法の有料老人ホームの届出は不要とされています。どのサービスを提供するかで手続きが変わるため、計画の初めに整理しておきましょう。

サービス付き高齢者向け住宅の登録基準は?

サービス付き高齢者向け住宅の登録基準は、大きく「建物(規模・設備・バリアフリー)」「サービス」「契約」の3つです。長崎市の案内では、次のように示されています(出典:長崎市「サービス付き高齢者向け住宅」)。

区分 主な基準
規模 各住戸の床面積が25㎡以上。居間・食堂・台所など共同で使う部分の面積が十分な場合は18㎡以上
設備 各住戸に台所・水洗便所・収納設備・洗面設備・浴室を備える(共用部分で代替できる場合の例外あり)
バリアフリー 床の段差、廊下の幅、手すりの設置、3階建て以上のエレベーターなど
サービス 状況把握サービスと生活相談サービスの提供が必須
契約 書面による契約で、高齢者の居住の安定が図られた内容であること(前払金の扱いなど)

細かな運用(面積の測り方、共用部分に含められる範囲など)は、登録先の自治体の基準で決まります。図面を固める前に、登録窓口に基準を確認しておくと安心です。

建物の設計で押さえたいポイントは?

サービス付き高齢者向け住宅の設計では、「住戸の広さと設備をどう組み合わせるか」が建築費と家賃を左右する一番のポイントです。設計の段階で、次の3つを決めておきましょう。

住戸を25㎡にするか、18㎡+共用部にするか

サービス付き高齢者向け住宅の住戸を25㎡以上にすると、各住戸に台所や浴室を設けやすく、自立度の高い方にも選ばれやすくなります。18㎡以上25㎡未満にする場合は、共用の居間・食堂・台所を十分に確保することが条件になり、介護が必要な方の見守りもしやすい間取りになります。どちらが合うかは、想定する入居者の介護度で決まります。

介護サービスの併設を前提にした動線

訪問介護や通所介護(デイサービス)などを1階に併設する場合は、職員が住戸と事業所を短い距離で行き来できる配置にすると、日々の運営が楽になります。併設部分は介護保険の事業所としての基準も満たす必要があるため、住宅部分と事業所部分の区分を早めに決めておきましょう。

建築基準法・消防法上の扱い

サービス付き高齢者向け住宅の建築基準法上の用途や、必要な消防設備は、住戸の設備の状況や提供するサービスの内容によって判断が分かれます。用途によって求められる防火・避難の基準や設備が変わり、建築費にも影響するため、設計の初期に建築主事や消防署と事前協議を行うことが大切です。

建築で使える国の補助はある?

サービス付き高齢者向け住宅の建築には、国土交通省の「サービス付き高齢者向け住宅整備事業」という補助制度があります。令和8年度の募集では、新築・改修の補助率は1/3で、新築は1戸あたり上限150万円などとされています(出典:国土交通省 報道発表「令和8年度 サービス付き高齢者向け住宅整備事業」の募集、2026年4月17日)。

主な要件は、新築の場合に住戸面積が25㎡以上であること、サービス付き高齢者向け住宅として10年以上登録を続けること、家賃が定められた限度額以内であることなどです。令和8年度は、事前の事業登録の締切が令和8年9月10日、応募の締切が令和8年12月11日とされています。補助は年度ごとに要件や締切が変わるため、計画の早い段階で最新の募集要領を確認し、着工時期と合わせて検討しましょう。

事業計画はどう立てる?

サービス付き高齢者向け住宅の事業計画は、「家賃・共益費・サービス費の収入」と「建築費の返済・運営費」の釣り合いを、入居率の変化も含めて確かめることが中心です。特に次の点を事前に決めておきましょう。

  1. 入居者像:自立の方が中心か、要介護の方が中心か
  2. 住戸数と広さ:25㎡か18㎡+共用部か、何戸にするか
  3. 家賃設定:地域の相場、年金収入の水準、補助を使う場合の家賃の限度額
  4. 併設する介護サービス:訪問介護、通所介護など、どの事業で収入を補うか
  5. 資金計画:自己資金、融資、補助金の組み合わせと返済計画

融資を受ける場合は、金融機関に事業計画書を出すことになります。資金計画の立て方はグループホームの融資と事業計画書の作り方も参考になります。土地をお持ちでない場合は、地主様に建物を建てていただき借りる方法もあります(グループホームの建て貸しとは?)。

長崎でサービス付き高齢者向け住宅を建てる流れは?

長崎でサービス付き高齢者向け住宅を建てる流れは、「土地と事業計画の検討 → 自治体・補助の事前確認 → 設計 → 着工 → 登録 → 入居開始」が基本です。

段階 主な内容
1. 土地・事業計画 立地の確認、入居者像と住戸数、収支の試算
2. 事前確認 登録窓口での基準確認、建築・消防の事前協議、補助の要件と締切の確認
3. 設計・融資 基準を満たす図面の作成、事業計画書による融資の相談
4. 着工・竣工 工事、併設事業所の指定申請の準備、入居者募集
5. 登録・入居 サービス付き高齢者向け住宅の登録、入居契約、運営開始

長崎市内の場合、登録を希望する事業者は国の「サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム」で申請書類を作り、長崎市 建築部 住宅政策室の窓口に申請します(出典:長崎市「サービス付き高齢者向け住宅」)。大村市・諫早市・長与町など長崎市以外の地域で計画する場合は、所在地の自治体に登録の窓口を確認してください。土地が市街化調整区域にある場合は、開発許可の確認も必要です(市街化調整区域に福祉施設は建てられる?)。

開設前のチェックリスト

  • 想定する入居者(自立・要介護)と住戸数を決めたか
  • 住戸を25㎡にするか、18㎡+共用部にするかを決めたか
  • 登録窓口で、面積の測り方や共用部分の扱いを確認したか
  • 建築基準法上の用途と消防設備について、事前協議をしたか
  • 国の整備事業補助を使う場合、要件と締切を確認したか
  • 併設する介護サービスと、その指定申請の時期を決めたか
  • 家賃・サービス費と返済のバランスを、入居率を変えて試算したか

よくあるご質問

Q. サービス付き高齢者向け住宅は介護施設ですか?

A. いいえ、サービス付き高齢者向け住宅は賃貸住宅です。状況把握と生活相談のサービスは必須ですが、介護は入居者が外部や併設の介護事業所と契約して受けるのが基本です。

Q. サービス付き高齢者向け住宅の部屋は何㎡必要ですか?

A. 原則25㎡以上です。居間・食堂・台所などの共用部分が十分にある場合は18㎡以上で登録できます。国の整備事業補助を使う新築は25㎡以上が要件です。

Q. 長崎市でサービス付き高齢者向け住宅の登録はどこに申請しますか?

A. 長崎市内は、長崎市 建築部 住宅政策室が窓口です。申請書類は国の情報提供システムで作成します。長崎市以外の地域は、所在地の自治体にご確認ください。

まとめ

サービス付き高齢者向け住宅の建築は、登録基準(住戸の広さ・設備・バリアフリー)、建築基準法や消防の扱い、補助の要件、併設する介護サービスを、設計の前にまとめて整理することが成功への近道です。特に、入居者像と住戸の広さの決め方は、建築費と家賃の両方に大きく影響します。

コムWELLは、長崎市・大村市周辺で、建物の計画から開設・運営面まで含めたトータルサポートを行っています。地元の地主様・不動産会社・金融機関とのつながりを生かした土地探しや建て貸しオーナーのご紹介、市街化調整区域での開設ノウハウ、事業計画書の作成もお手伝いします。詳しくはコムWELLのサポート内容をご覧ください。

この記事について

執筆:コムWELL(長崎県で介護施設・障がい者福祉施設の計画から建築・開設までをサポート)/最終更新:2026年11月05日

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